これまでの動き

皆生温泉エリアでのこれまでの動き

  • 2017.04

    若手旅館経営者が中心の「皆生温泉まちづくり会議」設立

  • 2019.03

    皆生温泉まちづくり会議が「皆生まちづくリビジョン」を策定、市長へ提出

  • 2021.08

    温泉関係者だけでなく、地元金融機関、建築デザイナー、観光振興団体、米子市で構成する
    「皆生温泉エリア経営実行委員会」設立

5つの場所と5つの取り組み

2020年度までに実際に動きのみられたアクションから、10項目を「リーディングプロジェクト」として整理します。

01道路

これまで

通過のための場にとどまる

皆生温泉は100年前描かれた町割りが今に残っています。約60mごとの碁盤目状の街区は、歩きながら次々と景観が変わるため、歩行者の視点で楽しめる構造になっています。しかし、現在では目的地まで移動するための通過の場にとどまっています。

通過のための場にとどまる

動き始めた取組

Park(ing)Day

2021年10月、四条通りの一部を一時的に歩行者天国化し、人が出会い、滞在できる場に変える試みが有志のメンバー6人により、行われました。この試みは「Park(ing)Day」と呼ばれ、2005年にサンフランシスコではじまった社会実験です。日本でも全国各地で同様の試みが行われており、道路空間を車ではなく人のための場にしていこうとのアクションが拡がりつつあります。皆生温泉で開催されたPark(ing)Dayは、企画や準備の期間は3ヶ月、予算は12万円と、低コストかつピーディーに実現され、当日は天候が優れなかったにもかかわらず、近隣に住む親子など約300人の参加があり、「居場所」としての道路空間の可能性を感じられる時間となりました。

Park(ing)Day結果概要
・実施日:2021年9月17日(金)
・来場者数:約300人
平均滞在時間:1時間

動き始めた取組

狭窄部の設置

四条通りの交差点(野口商店前)から米子市観光センター前は北から南へは車両進入ができない一方通行ですが、逆走が多く安全性が問題となっています。2022年3月12日、13日のイベントに合わせて、四条通り交差点の車道を狭め、歩道を拡げる「狭窄部」を設ける社会実験を行いました。道路管理部局や警察との協議を経て、皆生温泉エリア経営実行委員が白線を引きベンチやプランターを設置し狭窄部を実現しました。設置前に比べ、「飲食をしている」「居眠りをしている」など滞在者の多様な行動がみられただけでなく、歩行者数は2.8倍、特に65歳以上の高齢者は6.7倍、さらに「笑顔がみられる」通行者は3.1倍という結果が得られました。

狭窄部における行動観察調査
・狭窄部設置前及び狭窄部設置中において、目視により通行者、滞在者を調査
・調査日:2022年3月6日(日)9時ー10時/2022年3月13日(日)9時ー10時

狭窄部の設置

これからのイメージ

歩きたくなる道路へ

もともと日本で道路は公共的な活動や商業、交流の場でした。今再び道路を「自動車中心」から「人中心」の空間へ取り戻すという考えは、「ウォーカブルなまちづくり」と呼ばれ、全国的に取り組みが進められています。愛媛県松山市の花園町通りでは、道路全体における歩道幅の割合を拡幅するとともに、沿道にベンチなどを配置するなどの統一的なデザインにより「居心地がよく歩きたくなる」道路空間へ改変しています。これにより歩行者数が増加するだけでなく、不動産価値の上昇にもつながっています。その他にも、歩きたくなる「人中心」の道路にすることで、歩行者負傷者数が減少する、災害時の一時避難場所や避難経路として有効に機能するなどの効果が期待されています。皆生温泉エリアにおいても、「歩きたくなる居心地の良い」道路空間を目指します。

「ウォーカブル」
2019年6月「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」においてこれからのまちづくりの方向性として「WEDO」というキーワードが示され、まちなかにウォーカブルな公共空間を創造することが、新たな都市政策の重要課題であるとされている。

歩きたくなる道路へ

歩きたくなる道路へ

02遊歩道

これまで

「居」場所にはなっていない空間

皆生温泉は、海に面した温泉街であり、温泉街と海までの間に一般車両が通行できない遊歩道があります。朝の散歩やマラソン、サイクリングなどの活動が見られる皆生温泉の特徴的な場所ですが、座る、留まる、眺める、交流するといった活動はあまり目にすることがありません。

「居」場所にはなっていない空間

動きはじめた取組

官民境界線をまたぎ居場所をつくる

2021年度、情緒ある景観の創出・統一を目的とし、宿泊施設の軒下における壁面・塀等の美観向上に資する費用を補助するための「旅館ファサード整備支援補助事業」により、3件の改修が行われました。いずれも、官民境界線をまたぎ、心地の良い「居場所」をつくることが目指されたもので、夕日を眺める、おしゃべりをする、一杯飲むなど、これから遊歩道で多様な活動が起こることが期待されます。

カイケエリアデザインver1.0

官民境界線をまたぎ居場所をつくる

官民境界線をまたぎ居場所をつくる

これからのイメージ

多様な居かたができる場所へ

生産的、効率的な空間ではなく、人のための居場所。まちなかにそのような「居場所」をつくる試みも世界中で進んでいます。愛知県豊田市の「豊田市駅」西口にあるペデストリアンデッキ(高架上の歩行者専用通路)では、人の往来はあるものの通過するのみでした。そこで社会実験として、テーブル・イスの設置や市民活動団体による音楽演奏などを行うことで、通過だけでない多くの活動がデッキ上で行われることとなり、飲食事業者が出店するまでとなりました。「良い場所」とは、できるだけ多く(10以上)の活動や行為が行われる場所であると言われています。おしゃべりをする、偶然出会う、音楽を聴く、海を眺める、読書をする、打ち合わせをする、飲む、食べる。皆生の遊歩道は、そのような多様な居かたができる場所づくりに民間と公共が連携し取り組みます。

「Power of 10+」
公共空間の計画設計、活用の支援を行うニューヨークの非営利団体が提唱した「どのような規模の都市も、最低10か所の目的地が連続的に近接しているべきであり、各目的地はより小さな10の場所によって構成されるべきである。そして、各場所は人びとが携わる事ができる活動や行為を最低10個は提供すべきである。」という考え方。

多様な居かたができる場所へ

多様な居かたができる場所へ

03砂浜

これまで

限られた季節での楽しみの場所

「トンボロ現象」による波型の海岸線が特徴的な皆生のビーチ。夏場には多くの方が海水浴に訪れる皆生の重要な観光資源です。この重要な観光資源を十分に活用し、年間を通じた誘客につなげていくことが求められています。

限られた季節での楽しみの場所

動きはじめた取組

BEACH RESORT KAIKE

2021年、皆生温泉開発100周年を記念してビーチの名称を「皆生温泉海遊ビーチ」とし、ライフセーバーの拠点や遊具等のレンタル基地、飲食提供などを行うキューブ型のコンテナを設置するなど海浜施設とサービスを一新しました。コンテナは海水浴シーズンだけでなく秋のイベントでも使用され、新たなビーチリゾートの可能性を探っています。

2021年度の利用実績
・開設期間:2021年7月16日(金)〜8月22日(日)
※計38日間の内、悪天候により6日間が遊泳禁止
・利用団体:4団体
エシカル&和カフェ
NAGACHACafe1801inKAIKE
KAIKEKAJYU
CORCOVADO+
海浜事務所
・利用者数約24,000人

BEACH RESORT KAIKE

カイケジャンボリー

海水浴シーズン以外でも皆生の海を楽しめるようにとはじまったカイケジャンボリー。半透明のテント内でこたつに入る「UMICOTA」や、海風にのった巨大な凧、コンテンポラリーダンスや屋外レストランなど、様々なアクテビティや飲食メニューが用意され、観光客だけでなく地元米子の方も多く訪れました。

2021年度カイケジャンボリーの概要
・開催期間:
2021年11月5日(金)〜12月5日(日)の毎週金・土・日、及び11月23日(火・祝)計16日間
・プログラム/利用者数
空の水族館/約15,000人
ミニカイト体験/110人
AQUA BALL体験/282人
Beach LiveㆍFeel the dance/約4,000人
UMICOTA/133組
野外レストラン利用者数/約200名

カイケジャンボリー

これからのイメージ

多様な人が楽しめる場所へ

皆生のビーチは通年利用という視点だけでなく、男性も女性も、子どももお年寄りも、障がいのある人もない人も、観光客も地域の人も、様々な方が楽しめる場所を目指します。例えば、車イスでも海を楽しむことができるよう「ユニバーサルビーチ化する取り組みが全国で見られます。兵庫県神戸市の須磨海岸では、車椅子利用者、ライフセーバー、看護師、行政職員などが有志で集まり、日本で初めて遊歩道から海までをつなぐ「ビーチマット」を導入しました。水陸両用の車イスも常備し、障がいを持つ人でも海に入ることができるようなビーチとなっています。皆生の大きな魅力である海。その魅力を誰もが感じてもらえるよう、ユニバーサルなビーチづくりに取り組みます。

多様な人が楽しめる場所へ

多様な人が楽しめる場所へ

04未利用地

これまで

寂しい印象を与える空地

皆生温泉エリアには、普段は入ることができない松林や、空き地、空き不動産など未利用地が点在し、エリア全体として寂しい印象を与えています。

寂しい印象を与える空地

動きはじめた取組

イベントでの暫定的な利用

皆生温泉エリア経営実行委員会では、エリア内の松林の新たな利活用方法創出にかかる取り組みを支援するため、補助金を交付しました。この補助金を受けて、2022年3月12日、13日に、四条通り沿い松林と遊歩道東側の三角地帯などを活用したマルシェイベントが開催されました。普段は一般客の立ち入りが禁止されている四条通り沿いの松林では、このイベントで実験的に開放し、ハンモックやベンチなどを配置したことで多くの人がたたずみ、休憩する姿を見ることができました。遊歩道東側の三角地帯では、足湯やテントサウナ、薪ストーブなどが体験できるスペースとして王上土L連れの家族などで賑わいました。一般開放することによるゴミ廃棄の問題なども懸念されますが、松林をはじめとした遊休地を開き利用する可能性を十分に感じることができた2日間でした。

イベントでの暫定的な利用

これからのイメージ

戦略的に活用し価値を高める

全国的にまちなかの空洞化が進むなか、各地で賑わいを取り戻すための試みが動いています。佐賀県佐賀市の中心市街地では、まちなかの空き地を「原っぱ」化し、「空き地リビング」というコンセプトで芝生の広場と図書館として利用する輸送用コンテナを設置しました。8ヶ月の実証実験を経てコンテナは常設され、徒歩圏内に新たな広場や交流スペース、チャレンジショップなどを展開しています。新潟県の月岡温泉では、宿泊客を囲い込むのではなくまち全体で楽しんでもらえるよう、地区の若手経営者が共同出資し合同会社を設立。1年に1店舗、空き家・空き店舗をリノベーションしコンセプトショップをオープンさせ続けています。皆生温泉エリアでも、点在する未利用地・空き不動産を戦略的に活用し、エリアの価値向上をはかります。

戦略的に活用し価値を高める

戦略的に活用し価値を高める

05公園

これまで

行政主導の管理で活動に制限がある

かつてチンチン電車に乗って多くの人が訪れた競馬場は、現在の海浜公園となり、保育園児が松ぼっくりを拾いに訪れ、ある人は腕立て伏せをし、ある人は足湯を楽しむなど、市民の憩いの場となっています。個人レベルでは様々な活動が見られるものの、公園利用申請をみると、固定的な利用にとどまっていま立。また、多くの禁止項目が掲げられ、そのポテンシャルを最大限に引き出しているとは言えない状況です。

行政主導の管理で活動に制限がある

動きはじめた取組

イベント利用

イベント利用
2022年3月12日、13日に開催されたイベントでは、海浜公園も会場の一つとして利用されています。コーヒーやスイーツなどの飲食だけでなく、子どもでも楽しめる体験型のワークショップが多く出店され、賑わいある空間になりました。会場内でのアンケートでは、イベントではなく『普段の』皆生温泉でまち歩きしたくなると思うモノ・コトとして、カフェ・飲食店が62.3%と最も多く、食べ歩きスポットが61%で続く結果となり、飲食店のニーズが高いことが把握できました。また、アンケートでは、19.7%(15件)が屋台をつかって出店してみたいと回答があり、今後の関係人日拡大の可能性をみることもできました。一方、飲食提供に伴う電源を「どこから、どのように確保するか」は今後の課題としてあげられられます。

イベント来訪者へのアンケート調査
・調査日:2022年3月12日(土)-13日(日)
・会場でのアンケート用紙配布・改修及びQRコードでのWEBアンケート
・回答数:78件

イベント利用

これからのイメージ

多様な活動の受け皿となる公園へ

地域の特性に合わせ、地域の魅力を高める公園とはどういうものか。また、その運営はどうするべきか。全国的に「これからの公園」のあり方について模索が続いています。富山市にあるまちなか賑わい広場(グランドプラザ)は、自由な使い方ができるよう、ほとんど禁止事項のない条例を整備し、「稼働率100%の公共空閲上として知られています。年間通じて市民団体や企業、行政などが主催する様々なイベントが開催されるだけでなく、子ども連れの親子や近隣の高齢者など老若男女が思い思いに過ごす場として日常的に使われています。広島市内の中心部を流れる太田川では、民間による「RiverDo!基町川辺コンソーシアム」が占用許可を受け、公的な占用者として公共空間である「川辺」を運営・管理しています。HPでは、「できること・できないこと」「利用までの流れ」が細かく整理され、利用したい人が利用しやすいような窓口を設けています。
皆生温泉海浜公園においても、多くの人が憩い、安心して過ごすことのできる公園のあり方について検討していきます。

多様な活動の受け皿となる公園へ

多様な活動の受け皿となる公園へ

06灯り

これまで

夜の魅力を感じにくい照明

水木しげるロードが公共照明を刷新し、エンターテイメント性の高い夜間景観を演出したことで高い経済波及効果をあげたように、観光地において「灯り」の整備は非常に重要です。現状、温泉街らしくない灯りの色や、照明器具の劣化などがみられ、皆生の大きな資源である海の魅力も夜には十分活かしきれていません。

夜の魅力を感じにくい照明

動きはじめた取組

KAIKE AKARI PARK

皆生温泉エリアでは、照明デザイナーの株式会社LEM空間工房とともに「皆生みらいの灯りコンセプト」を策定し、2021年3月、皆生海浜公園を中心として遊歩道や四条通りの一部で、灯りの検証を行う実証実験を行いました。天候不良により1日間のみの開催でしたが、来場者は700人に達し、アンケートでは「今後もこの夜景が必要」との回答が80%ありました。この結果をふまえ、イベント後には「皆生みらいの灯りコンセプト」を策定し、民間事業者による事業協同組合が設立され、官民連携による夜間景観のリニューアルが進められています。

皆生みらいの灯りコンセプト=海に開く
コンセプトは以下の5要素で成り立つ。
①Vista
・海側から見える砂浜・海岸線・旅館の奥行きある景観へ改善する
②View
・海の眺望を活用する
③Eat
・海側からの飲食アクセスを創出する
④Activity
・海を背景にした撮影スポット・海浜アクティビティを支える電源を整備する
⑤Walk
・路面が明るく歩く楽しさのある遊歩道を整備する

KAIKE AKARI PARK

これからのイメージ

夜も歩きたくなるまちへ

公共照明だけでなく、各旅館の海側の地上階が海に開かれ光が滲み出すことで、夜間の安心感と景観の魅力が高まることから、「皆生みらいの灯りコンセプト」では、「海に開く」をキーワードとしています。
夜の海を活かし、海に開かれた取り組みは、京都府北部の天橋立でもみられます。天橋立では観光庁の「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」を受け、砂浜のライトアップに合わせた飲食提供やクルージングを実施し誘客につなげています。山口県の長門湯本温泉では、川沿いの夜間景観改善の取り組みとして、共通の「提灯」を軒先に設置する試みを行っています。旅館だけでなく民家も含め、エリア全体での取り組みがまちの夜の魅力を高めています。
皆生温泉においても、砂浜、海岸線、旅館が一体となって形成した、皆生温泉ならではの「海に開く」景観づくりを官民が連携して進めていきます。

夜も歩きたくなるまちへ

夜も歩きたくなるまちへ

07移動

これまで

限定的な移動手段

南北約400m、東西約1kmの皆生温泉エリア。一般的な徒歩圏は半径500mと言われてお高齢者のり、米子市全体で高齢化が進むなか、地域内での移動手段確保は今後重要な課題となります。また、脱炭素社会の実現に向けても環境負荷の少ないモビリティ(移動手段)の導入が求められます。

限定的な移動手段

動き始めた取組

グリーンスローモビリティの試走

皆生温泉エリア経営実行委員会が2021年度に交付した「旅館の新規ビジネス実証実験補助事業」を活用し、2022年3月、皆生温泉エリアにおける高齢者の移動支援や観光地としての魅力向上のためグリーンスローモビリティを運行する実証実験が行われました。グリーンスローモビリティとは時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス及びその車両も含めた総称で、地域が抱える様々な交通の課題の解決や低炭素型交通の確立が期待されている新たな移動手段です。電話予約により自宅から病院、スーパーへの送迎を行う福祉的な移動支援だけでなく、周遊ルートを定め自由に乗り降りできる観光目的での運行も試行し、多くの方に乗車いただきました。

社会実験の概要
実施期間:
2022年3月2日(水)〜15日(火)
・利用者数:
3/12-13を除く移動支援71名
3/12-13での観光利用100名

グリーンスローモビリティの試走

これからのイメージ

アクセス・接続が良く、歩行者と共存した
モビリティが走るまちへ

広島県福山市では、全国で初めてグリーンスローモビリティによるタクシー運行がはじまっています。運営は地場のタクシー会社で、日本遺産に登録された鞘の浦からはじまり、福山駅前のまちなかでも社会実験を実施しています。
運営事業者へのヒアリングカ‘らは、観光コンテンツ、地域内での移動支援という側面だけでなく、高齢者の就労機会という面でも優れた取り組みであると把握できました。エリア内だけではなく、市内や市域を越えた広域的な地域間交通の連携も今後求められます。特に、2023年に駅舎・自由通路の共用が開始される米子駅は、米子の陸の玄関口として生まれ変わることが期待されており、あわせて米子駅と皆生温泉をつなぐ移動手段の充実も求められるところです。

アクセス・接続が良く、歩行者と共存したモビリティが走るまちへ

アクセス・接続が良く、歩行者と共存したモビリティが走るまちへ

08駐車場

これまで

日帰りでの利用がしにくい環境

皆生温泉エリアではエリア内の約26%が駐車スペース(右図の黄色部分)となっています。地域住民・日帰り客は将来の宿泊客となりえる「潜在顧客」であり、安心して滞在できる環境づくりが必要ですが、現状日帰り利用の駐車場が十分ではなく、違法駐車も多くみられます。

日帰りでの利用がしにくい環境

動きはじめた取組

旅館駐車場のシェア

旅館駐車場のシェア大規模な整備費をかけるのではなく、低コスト・低リスクで駐車場整備を進めるため、シェアリングサービスを導入し、旅館の駐車場を宿泊客だけでなく一般利用も受け入れる試みをはじめています。既存の駐車場シェアリングサービスはスマートフォンのアプリで空き状況が確認でき、キャッシュレス決済にも対応していることから、一定数の駐車スペースが確保できれば、利用者にとってメリットが大きいと期待しています。

シェアリングサービス導入状況
・導入サービス:akippa
・エリア内での参画事業者数:2事業者
・エリア内での駐車台数:35台

旅館駐車場のシェア

これからのイメージ

「共」の資源の活用

公共政策を専門にする広井良典は「共」について「「私」とも「公」とも異なる、いわば「新しいコミュニティ」とも呼びうるような」ものとしています。この公共publicでも私性privateでもない共同性commonは環境、福祉、経済など様々な分野でその重要性が謳われています。長門湯本温泉では、エリア全体での価値を高めるため、「共」の視点をもった組織「長門湯本温泉まち株式会社」を設立しています。ここでは駐車場を共用化し、その収入や入湯税の引き上げ分を基金として積み立て、公益性の高い事業やインフラの維持・修繕に再投資しています。北海道札幌市では、商店街などにより設立された「共」の組織「札幌大通まちづくり株式会社」が「都市再生推進法人」の指定を受け、多目的に使用できるコンテナを公共空間(駅前歩道)に設置し、飲食事業や物販などの事業で収益をあげ、まちの魅力を高める事業費に充てています。皆生温泉においても、「共」の視点で資源を活用し、エリア全体の魅力を高める循環をつくっていきます。

「都市再生推進法人」
一定の条件を満たし、市町村の指定を受けることで、道路・公園などの公共空間を特例的に占用することやまちの魅力を高める施設の設置などを行うことができるようになる法人格。都市再生推進法人に土地を譲渡すると、土地所有者は譲渡所得の特例措置があるなど、不動産流通も期待される。

「共」の資源の活用

「共」の資源の活用

09主体・参画者

これまで

エリア全体での取り組みを担う主体の成長が求められる

米子市全体の宿泊飲食サービスの約3割を占める皆生温泉エリア。2019年に策定した「皆生温泉まちづくりビジョン」の実行を担う組織としてエリア経営実行委員会を設置しました。しかし、エリア全体の振興を目指すうえでは、今後も継続的に参画者の拡大をはかる必要があります。

動きはじめた取組

ワークショップ

2021年度に、皆生温泉エリア実行委員会の主催でワークショップを開催しました。自治会関係者、民間事業者、行政関係者などがフラットな立場で同じテーブルを囲み、皆生温泉のありたい姿について意見を出し合い、それに向けたアクションのアイデアを描いていくことで、皆生に対する当事者意識が高まるとともに、参加者間の構築の機会となりました。

2021年度ワークショップ概要
第1回:2021年10月15日(金)
・皆生温泉に「あったらいい」「できたらいい」「私がやりたい」モノやコト
・参加者57名
第2回:2022年1月14日(金)
・各スポットで「やってみたい」企画の
検討会議
・参加者45名
第3回:2022年2月25日(金)
・公共空間の活用について、ゲスト事例から学ぶセミナー
・参加者36名

ワークショップ

これからのイメージ

関わりしろのあるまちへ

「関係人口」という言葉が生まれたように、多様なまちへの関わり方をデザインし、様々な人・団体・企業などの力を集め魅力を高めていく地域が増えています。東京都多摩地区にある「学園坂タウンキッチン」は、旧オーナー制のチャレンジショップとして運営さ1日オーナーれているシェアキッチンをです。自分の料理を提供したいという「やってみたい」思いをもった人が集まり、ここでの経験をふまえ自身の店舗を構え巣立っていく。まちの賑わいと、まちに関わる人の発掘・育成が両立した取り組みです。神奈川県鎌倉市では、まちを良くするためのアイデアをプロジェクト化し続ける「カマコンバレー」という取り組みが続いています。毎月1,000円の会費で定例会を開催。定例会では発表者数名がまちを良くするアイデアを出し合い、みんなで実現に向けて支援しあう。参加の条件は「鎌倉を熱くしたい人」。反対する人がいなければ、全員の賛成を待たずに動き出すというスピード感で、地域の実践者を増やし続けています。皆生温泉においても、生きがい・やりがいをもって皆生に関わる人が増える、関わりしろのあるまちを目指します。

関わりしろのあるまちへ

関わりしろのあるまちへ

10発信

これまで

変わる過程を届けられていない

皆生についての情報は、各旅館による発信が積極的になされているものの、イベントや宿泊、観光情報が主であり、普段のまちの顔、暮らしに根づいたまちの情報を発信することはできていません。地域に開かれたエリアとして、地元の方にも届けていけるような仕組みや、変わりつつあるまちのプロセスを共有しファンを増やす取り組みが求められています。

動きはじめた取組

定期的な情報発信

米子市では信金中央金庫創立70周年記念事業として企業版ふるさと納税制度を活用した寄附をいただき、皆生温泉振興を目的とした事業を行うこととなりました。このなかで、定期的な情報発信を行っています。日本海新聞の協力により、皆生温泉周辺のエリアへの新聞折り込みが実現したことで、皆生温泉の情報を毎月フリーペーパーとして発行、発信することが可能になりました。2022年度には、ポータルサイトの整備や、SNS発信、実証実験を前提とした人材育成研修を行う予定です。

定期的な情報発信

これからのイメージ

皆生に関わる機会としての情報発信

変わりつつあるまちの変化を発信することは、関心層を拡大し、まちに関わる人を増やすことにつながります。愛知県岡崎市では、中心市街地の乙川を中心としたエリアを「QURUWA」と名付け都市整備を進めています。この過程の社会実験の様子やエリアの紹介をデザインされた小冊子で発行するほか、エリアに関連する情報をFacebooKの公開グループで共有しています。また、一方的な情報提供だけでなく、ソーシャルリスニングなどを取り入れ、的確にニーズをとらえ取り組みを改善する仕組みも今後は求められます。変わりつつある皆生温泉でも、エリア内の動きを集約し発信する、発信した情報のフィードバックをふまえ改善していくことで、皆生に関わる人の輪を広げていきます。

「ソーシャルリスニング」
SNSなどのソーシャルメディアで発信された個人の情報を収集・分析し、ブランド向上やリスクマネジメントとして活用する手法。

QURUWA通信
2017年の社会実験「MeguruQuruwa」の内容や、2018年のかわまちくり、通りの社会実験、龍田公園の内容が写真を中心に紹介されています。どんな公園なのか?どんな橋なのか?イラストでわかりやすく解説されています。

皆生に関わる機会としての情報発信

皆生に関わる機会としての情報発信