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2026.03.06

小さな本棚から、ゆるやかなつながりが生まれる場所。カイケノマド本棚オーナー・河田さんインタビュー

「とりあえず、やってみよ」から始まった本棚オーナー

河田さんがカイケノマドを知ったのは、たまたまネットで見かけたのがきっかけでした。

最初から細かいコンセプトを理解していたわけではなく、「ゆるく関われそう」「本を使って何かできるって素敵だな」という、直感に近い感覚で参加を決めたといいます。

「“本が好きだから”というより、“本を通して何か生まれたらいいな”という気持ちでした。まずはスタートしてみよう、って」

振り返ると、その“まずやってみる”という姿勢が、とても大切だったと話してくれました。

本は、人生のフェーズを映す鏡

河田さんの本棚には、料理、発酵、暮らし、写真多めでさくっと読める本、そして地元の気配を感じる一冊まで、幅広いジャンルが並びます。

正社員として働いていた頃は、仕事に直結するスキルアップ本やマーケティング関連の書籍を中心に読んでいました。
その後、転職。環境が変われば、読む本も変わる。
そして今は、時間のゆとりや本棚の入れ替えをきっかけに、また違う本と向き合っています。

「自分の立場によって、読む本は変わりますよね」

本棚に並ぶ一冊一冊は、過去の自分との対話でもあります。

実は、家の本を整理しようとしていたタイミングで本棚オーナーの存在を知ったそうです。読んでいない本、好きだった本をいったんここに持ってきてから手放そうと思っていた。けれど、不思議と“本に関わる出来事”が起きて、なかなか手放せない。

まるで本のほうが、「まだここにいるよ」と語りかけているかのようです。

ガッツリ読まなくていい。本との距離は人それぞれ

河田さんが意識しているのは、「10分〜20分でも読める本」があること。

「立ち寄って、パラパラ見て、“なるほど”って思えるくらいの距離感がいいなって」

写真が多く、文字量が重すぎない本。
ちょっとした待ち時間や、バスの合間にふらっと入って読めるボリューム感。

“ちゃんと読まなきゃ”ではなく、“触れてみる”くらいでいい。
その軽やかさが、河田さんの棚の大きな魅力です。

店番をして気づいた、人とのつながり

本棚オーナーになって変わったことを聞くと、河田さんはこう話します。

「自分にも“店番”ができるんだって思えたこと。それと、いろんな人と自然に話せるようになったことですね」

バス待ちの人、たまたま立ち寄った人、イベント帰りの人。
本の話をしない日も多く、雑談がそのまま心地よい時間になることもあります。

「井戸端会議みたいな感じです(笑)」

本を介して生まれる、肩の力が抜けたコミュニケーション。
それが、カイケノマドらしい時間の流れをつくっています。

本を通して、オーナー同士も“間接的につながる”

他の本棚オーナーさんと、頻繁に顔を合わせるわけではありません。
それでも棚を見れば、「この人は、こういう本を読むんだな」と自然と伝わってくる。

直接会わなくても、本を通じて価値観や興味が行き交う。
そこに、この場所ならではの面白さがあります。

「小さなつながりでいいと思うんです。
何十人、何百人じゃなくて、少しずつ」

他の方の本棚にあったテーマと、自分の本棚の一冊が響き合う。
ある本で興味を持った人が、別の棚へ足を運ぶ。

本棚はそれぞれ独立しているようで、
実は静かに、ゆるやかにつながっているのです。

言葉にしづらいけれど、確かにある魅力

「カイケノマドって何?」と聞かれると、正直うまく説明できない、と河田さん。

図書館でもない。
カフェでもない。
レンタルスペースとも少し違う。

だからこそ、実際に来て、本棚オーナーと話してみるのが一番早いのかもしれません。

「地味に、ちょこちょこ。来てくれた人に“こういう場所ですよ”って伝えていけたら」

強くすすめる場所ではない。
でも、ふと立ち寄った人の心に、静かに残る場所。

“とりあえずやってみる”が、世界を少し広げる

河田さんは最後に、こんなことを話してくれました。

「やってみたから、見えた課題もあったし、できることも分かってきた。
来年はまた違う形が生まれるかもしれませんね」

本棚から始まった小さな一歩。
それは確実に、河田さん自身の世界と、人との縁を広げています。
本を読まなくてもいい。借りなくてもいい。
“ちょっと寄ってみる”だけで、何かが動き出す場所として。

案外こういうところから、じわっと変わるんですよ、と。

 

小さな本棚から始まる、小さな出会い。
ページをめくる音と、たわいない会話と、ふと重なる誰かの気配。

ここでは、本は“読むもの”であると同時に、人と人をそっとつなぐ場所でもあります。
河田さんの「とりあえずやってみる」という一歩がつくったのは、大きな仕組みではなく、続いていく日常の風景。

今日もカイケノマドは、静かに開かれています。
本を読まなくてもいい。借りなくてもいい。
ただ立ち寄るだけで、小さな変化が芽吹くかもしれません。

そんな場所が、まちにひとつある。
それだけで、少しやさしくなる気がします。