[カイケを動かす人:vol15]インタビュー 仲子秀彦さん:「人生は思い出づくり」~見つけた新しい人生の視点~
2024年10月6日、米子市観光センターで開催されたイベント『ぺちゃくちゃかいけ』。皆生温泉を盛り上げるためにアイデアを出し合うこの妄想会議で、「人生は思い出づくり」という一言が参加者の心に響きました。その言葉を発したのは、福生西3区自治会長の仲子秀彦さん。この印象的なフレーズの背景にある仲子さんの想いを深掘りするため、私は仲子さんにインタビューをお願いし実現しました。
人生を振り返り、見えてきた「思い出」の価値
仲子さんは35年前、仕事の転勤で米子市に移り住みました。仕事に追われる毎日、さらに6年間の海外赴任も重なり、家族との時間は思うように持てませんでした。当時はスマートフォンのように写真を撮って記録する手段もなく、家族との思い出は断片的で曖昧な記憶にとどまっていたといいます。
しかし、定年を迎え、ふと振り返った自身の人生で見えてきたのは、「思い出を意識して作ることの大切さ」。何気ない日々でも、意識を持って残していくことで、人生がより豊かなものになるという気づきでした。
年末の重大ニュース:家族の思い出を紡ぐ時間
家族の思い出をより深く刻むために、仲子さんは毎年年末の家族が集まるときに「今年の重大ニュース」をそれぞれが発表することにしたのです。
「何気ない出来事も、ニュースとして発表することで、記憶にしっかりと残るんです」と仲子さんは笑顔で話します。「何を話してもいいんです。昇進、新しい趣味、小さな出来事でもかまいません。それを振り返ることで、その年の思い出が言葉として記憶に刻まれるのです」。
これを始めたことで、家族間のコミュニケーションが深まり、これまで以上に家族との絆を感じるようになったと語ります。また、「重大ニュース」の発表以外にもビンゴ大会を開催し、賞品を持ち回りで準備。こうして、家族全員が楽しむ時間を共有することで、ただの思い出ではなく、家族全員で紡ぐ物語の一部としての記憶が積み重なっているといいます。
目的を持つことで変わる「思い出の質」
「思い出を作ろうと思って出かけた場所と、なんとなく行った場所では、見える世界がまったく違うんです。目的意識を持つことで、その体験の記憶や感動もより鮮明に残るんです」と仲子さんは語ります。定年後の10年間は、目的を持って過ごすことで、これまでとは異なる形で充実した「思い出」に満ちた日々を楽しんでいるといいます。
また、「重大ニュース」を発表するために、日常の中で「これはニュースになるかもしれない」と思った出来事を忘れないよう書き留めているとのこと。こうすることで、ぼんやりした記憶ではなく、鮮明に記録として残せるのだそうです。流れていく日々を、自らの手で彩り、未来への宝物として積み重ねているのです。
私が感じた「思い出づくり」の新しい視点
インタビューを通じて、「思い出を作る」という言葉の奥深さに気づかされました。皆生温泉を訪れる方々が、ここでどんな瞬間を切り取り、どのような物語を作るのか。そのすべてが、この地域の魅力を形成する大切なピースとなるのです。
目的を持って過ごすことで、人生の何気ない日々が鮮やかな体験に変わり、それが家族や友人との絆を深める一歩となる。仲子さんの言葉は、これからの皆生温泉のまちづくりや私自身の人生の歩み方についても大きなヒントを与えてくれました。
そして改めて思いました。ただ訪れるだけではなく、「どんな瞬間を心に刻みたいか」という意識を持つこと。その積み重ねが人生を輝かせ、皆生温泉での時間を特別なものに変えるのです。皆生温泉という場所が、訪れる方にとって「自分だけの思い出」を作るきっかけを与えられる場であればと、心から願います。
人生の旅路で、思い出づくりの一歩を踏み出す。それは皆生温泉でのひとときから始まるのかもしれません。