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column KAIKE PRESS

2023.08.10

連載コラム
「孫さん、ウェルビーイングって何ですか?」#1
ウェルビーイングってなんだ?

「孫さん、ウェルビーイングって何ですか?」

皆生温泉エリアで目指す「ウェルビーイング」。最近、いろんなところで耳にするこの言葉だけど、どんな意味なんだろう?「まち」「温泉」とどんな関係があるの?映画製作や即興劇、路上での健康相談など、様々な方法でウェルビーイングを高めるための活動を実践、研究する孫大輔さんに「ウェルビーイング」について連載していただきます。

ウェルビーイングってなんだ?

ウェルビーイング(well-being)という言葉が今、注目を集めています。健康や幸福の発展概念として、社会福祉・医療・心理などの分野で使われ、普及しはじめたものです 。しかし、最近では、政府による働き方改革の推進や価値観の変化なども背景に、ビジネス界など、多くの分野で用いられています。

ウェルビーイングは 、定訳がありません。単なる「健康」でもなく、happyであることの「幸福」とも違います。「福祉」と訳されることもありますが、福祉は「welfare(ウェルフェア)」という異なる用語があります。
心理学者のセリグマン博士によると、ウェルビーイングは一つの状態というよりは「構成概念」であり、少なくとも5つの要素を含みます、「ポジージメント」、「良好な関係性」、「意味・意義」、「達成」の5つです。セリグマン博士によると、ウェルビーイングは単なる幸福な状態とは異なり、「持続的な幸福」と深い関係があるそうです。

しかし、幸福・幸せとは何でしょうか。それは個人によって異なるものなのではないでしょうか。ここでは、個々人が何を幸せに感じるのかという「意味」が問われています。例えば、何らかの事故や病気で体に障害をおったとしましょう。そのとき、その人のウェルビーイングは損なわれたということになるのでしょうか?それでも、その障害を抱えたことで人生の深い意義に気づいたり、障害があるからこそ新しい挑戦ができるようになったという「意味」を感じることができたら、その人のウェルビーイングはむしろ向上したと言えるかもしれません。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、人間にとって最も価値の高い善きものとして「エウダイモニア(幸福)」という概念を述べています(『ニコマコス倫理学』)。ここでいう「幸福」とは、人間を人間たらしめる至上の価値であり、単なる快楽とは違います。快楽だけでは、人間は深い幸福に達することはできない。むしろ、心の中の神(ダイモン)に従って、良く生き、良く行為することが、真の意味での幸福と考えたのです。この「エウダイモニア」が、現在のウェルビーイングに近い概念だとも言えそうです。

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には「ほんとうの幸い」という言葉が出てきます。「ぼくのおっかさんが、ほんとうに幸いになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんの一番の幸いなんだろう」とカムパネルラは言います。本当の幸いを求める旅は、ウェルビーイングに通じているのかもしれません。

孫大輔 家庭医(総合診療医)/鳥取大学医学部地域医療学講座講師